確定拠出年金(DC)とは何でしょうか、通常の年金とはどう違うのでしょうか。
話題になっている個人型確定拠出年金(iDeCo)との違いは?
早く始めるほど節税メリットが大きく、特にサラリーマンには老後の強い味方になります、活用のポイントを見ていきましょう。
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確定拠出年金とは
勤め先が手続を行っているのであまり普段は意識しないと思いますが、サラリーマンのみなさんは、厚生年金というものに加入しています。
(サラリーマン以外は国民年金に加入することになりますが、ここでは割愛)
通常、いわゆる「社会保険完備」の会社に勤めていれば、第2号被保険者として、健康保険と厚生年金にセットで加入していることと思います。
加入の手続きなどは知らなくとも、給与から天引きされている(それも結構な額)おなじみのものとして理解されているのではないでしょうか。
厚生年金は、会社と個人とで保険料を折半して支払っていて、また通称「2階建て」と呼ばれる構造が自動で付帯されており、国民年金より優遇されている部分もあります。
さらに「3階建て」に相当する部分として、会社によっては厚生年金基金もしくは確定拠出年金が用意されており、このうち後者を選択している企業でこの確定拠出年金が利用可能です。
確定拠出年金とは
確定拠出年金(Defined Contribution Plan、DC)とは名前の通り年金の一種で、確定拠出年金法に基づく私的年金の一種で、2001年から導入が始まりました。
一定の掛金を「確定」して「拠出」する、つまり納めて、その掛金を運用した結果の額を老後に受給できるというものです。
ちなみに、対義となる確定給付年金(Defined Benefit Plan 、DB)という用語もあります。
厚生年金基金や企業の確定企業給付年金、またそもそもの厚生年金保険や国民年金も仕組みとしてはこちらにあたり、簡単に言うと、貰える額が貰う前から一定の規則や計算式で定まっているもの、という意味です。
掛金の上限は、厚生年金基金か確定給付年金がある企業(または私学共済の加入者の場合)は月額27,500円、いずれも無い企業の場合、月額55,000円となります。
また、マッチング拠出が利用可能な場合もあります。
つまり、マッチング拠出を利用しても上記の上限が限度額となります。
自分の会社で利用可能かどうかも調べておき、金銭的に余裕がある場合はマッチング拠出の活用も視野に入れましょう。
個人型確定拠出年金(iDeCo)とは
個人型確定拠出年金(individual-type Defined Contribution pension plan、iDeCo=イデコ)とは、
従来、確定拠出年金は企業として加入している方のみに限られてきましたが、2017年1月からは基本的に全ての人、具体的には下記の方も個人型確定拠出年金に加入することが可能になりました。
- 企業年金のあるサラリーマン
- 専業主婦(第3号被保険者)
- 公務員
基本的には企業型の確定拠出年金と同じ仕組みですが、個人型は個人がすべての掛金を拠出するという点が大きな違いです。
個人型は、自営業者などの第1号被保険者や、サラリーマンのうち、基本的に企業型年金や厚生年金基金などの確定給付型の年金制度がない場合に利用できます。
国民年金の第1号被保険者は、掛金の上限は月額68,000円。
ただし国民年金基金への加入・付加保険料の納付があればそれと合算された金額が上限となります。
(脱サラして自営業者となる場合は対象となってきますが、詳細は割愛)
第2号被保険者となるサラリーマンの場合は少々複雑です。
- 勤務先に厚生年金基金、確定給付年金、企業型DC、年金払い退職給付のいずれの制度も無い場合、上限は月額23,000円。
- 企業型DCのみを実施する場合、上限は月額20,000円。
- 確定給付型年金、年金払い退職給付のいずれかを実施する場合、上限は月額12,000円。
また、主として配偶者が加入する国民年金の第3号被保険者では、上限は月額23,000円となります。
メリットは何?
確定拠出年金のメリットは、端的にいって税制面の優遇で、事実上利回り15%以上の金融商品と考えられます。
運用益への期待もできますが、受け取れるのが60歳以上であることを考えれば投資の戦略は自ずと絞られ、多くの場合、非課税であることのメリットのほうが金額面でも大きく効いてきます。
メリットは?
主なメリットは次の通りです。
- 節税効果が高い
- 掛金の全てが所得控除となる
- 運用中の利益が非課税となる
- 年金として受取る際に、公的年金等控除や退職所得控除が適用される
- 運用益が期待できる
- 上手く運用できれば、掛金に対して、かなり大きな金額が受取れる。
- 国民年金基金とは違い、インフレに対して強い。
- 転職や中途退職をしても、確定拠出年金の持ち運びができる。
また確定拠出年金は、年金型で月々一定額を受取るやり方以外に、一時金として一括で受取ることも可能で、その際に退職所得控除が利用できます。
デメリットは?
メリットの大きい確定拠出年金ですが、デメリットも無いわけではなく、注意して運用が必要です。
- 商品によっては元本保証が無い(元本保証の商品だけを選択することも可能)
- 年金を受取れるのは60歳以上か死亡時に限定され、中途解約はできない。
- 運用委託手数料(信託報酬)や口座管理手数料がかかる。
- 特別法人税1.173%が毎年かかる。(特別法人税の凍結が2017年3月末まで延長)
総合してメリットのほうが大きいと言えますが、特別法人税については現在凍結されているものの、今後解除されるとインパクトが比較的大きいため、状況を注視する必要があります。
結局いくらの節税になるか?
計算は少々複雑ですが、仮に年収500万円程度、月々の掛金を5万円として計算してみましょう。
まず、掛金は年間で5万円×12ヶ月=60万円となり、この金額が所得控除の対象となります。
累進課税制度のため、年収によって得られる節税の金額も変わってきます。
仮に、会社員として695万円以下の年収とすると、所得税率は20%程度、住民税は一律10%です。
この場合、所得税は60万円×(20%+20%×復興特別所得税2.1%)=12万2520円で、いっぽう住民税は60万円×10%=6万円。
計算上は、支払うはずの税金から、合計18万2520円が所得控除によって節税できることとなり、しかも確定拠出年金に加入している間、毎年得られます。
年収が多く、支払っている税金も多い方の場合は、上限まで拠出を行ったほうが良いことになります。
ただし、企業によってはマッチング拠出が利用できなかったり、上限までの拠出ができない場合もありますので、その場合は個人型の併用も1つの選択肢となります。
なお、住宅ローン減税などで既に税金が控除されている場合は、上記の満額が控除にならない場合もありますので注意が必要です。
(運用益が得られる年金としてのメリットには変わりはありませんので、部分的に節税効果がないと言っても、直ちに意味がない、というわけでもありません)
選ぶべき商品と運用の基本
企業型・個人型いずれも、基本的に証券会社が運営を行っています。
企業型では証券会社が決まっていますが、個人型は当然ながら運営会社を自分で選ぶことができ、取り扱っている商品の種類や内容、口座管理手数料などで比較すると良いでしょう。
類似の商品でも手数料が大きく異なる場合もあり、よく選んだほうがより高い節約になります。
加入者は、運営管理機関を通じて運用指図を行い、資産を運用しますが、インターネット上で運用指図ができるサービスを提供していることがほとんどです。
-
- 配分指定
掛金の拠出開始前に、提示された運用方法の中からどの商品にどのような割合で掛金を振り分けるかを指定します(企業型の場合、規約であらかじめ定められている場合もあります) - 配分変更
指定した振り分けの配分を変更できます。変更時点における保有資産には影響がなく、変更月以降に拠出される掛金に配分が反映されます。 - スイッチング
現行の保有資産を売却し、損益を確定させて別の商品を購入します。
- 配分指定
商品は運営会社によって異なりますが、大きくは下記の分類となります。
- 元本保証型(低リスク、低利回り)
- 年金保険
- 定期預金
- 投資信託(リスク有り、程度は商品による。中〜高利回り)
- 日本債権
- 日本株式
- 国外債権
- 国外株式
いずれの商品を選んだとしても、あくまで年金という性質上、60歳になるまで基本的に戻ってきませんので、10〜20年単位の長期の投資となります。
拠出額を決め、ドルコスト平均法で投資することになりますので、極端に偏ったバランスにしなければ大きな問題は起こらず、安定的な利回りが期待できると考えられます。
まとめ:未加入の人は今すぐ加入し、定期的な見直しを
特に企業型においては「加入しない」という選択肢もあり、その場合は確定拠出年金に回すはずの拠出金を一時金などの形で受け取ることになりますが、その場合は所得として通常の課税対象になります。
長期的に見ればメリットの大きい制度のため、よほど金銭的に余裕がなかったり、老後の資金に全く心配がないという場合を除いては、一般的なサラリーマンはぜひ加入したほうが良いと言えます。
また、加入時期が早ければ早いほど、非課税のメリットを享受できる期間も長くなります。
定期的な見直しは必要ですが、老後に向けての強い味方としてうまく活用しましょう。