サラリーマンであれば、給与から天引きされる年金の額は、大体ご存知かと思います。
その一方で、いったい自分が老後いくら年金が貰える予定なのか、自信を持って答えられるという方は少ないのでは。
20〜30台ぐらいのうちはあまり意識しない方も多いと思いますが、老後の資金は早くから蓄え始めたほうが有利です。
サラリーマンの年金との基本的な付き合い方を整理します。
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サラリーマンの年金は「厚生年金」
サラリーマンの場合、会社がほとんどの手続を代行してくれるため、もともとあまり深く考えなくても一定の年金が手に入るように制度が設計されています。
ただし、リーマンショックに端を発する契機の停滞と年金改革で、ただただ月々給与から年金を収めてさえいれば老後は年金で安心して暮らせる、という時代ではなくなりました。
そもそも年金という制度がどのように設計されているのかを見ていきましょう。
厚生年金とは
年金にもいくつか種類があり、その人の職業によって加入する年金制度が異なります。
サラリーマンは第2号被保険者に分類され、国民年金に加えて厚生年金に加入しています。
サラリーマンは自営業者等に比べると、国民年金(基礎年金)の上の「2階建て」部分として厚生年金にも加入しているため、老齢年金の受給額が大きくなります。
また、厚生年金の保険料の半分は会社が折半で負担するため、個人が納めている保険料に対して、割の良い年金を受け取ることができる仕組みになっています。
また会社員の配偶者は第3号被保険者となり、国民年金を支払っているのと同じ扱いとなるにもかかわらず、特にお金を納める必要がありません。
厚生年金の仕組みがある分、サラリーマンは自営業者等に比べると優遇されていると言えます。
厚生年金基金とは?厚生年金とは違う?
名前が似ているので混乱しがちですが、厚生年金と厚生年金基金は別のものです。
「厚生年金」は国が運営する公的年金の仕組みで、厚生年金基金は企業が運営する企業年金となります。
そのため、基本的にすべてのサラリーマンが厚生年金に加入しているのに対し、厚生年金基金に加入しているかはその人が勤めている会社によります。
会社が厚生年金基金に加入していれば、厚生年金に加入している従業員は自動的に厚生年金基金にも加入することとなり、年金をたくさん受け取れることになります。
しかし、リーマンショックを皮切りに企業の年金運用が難しくなり、平成26年4月に消費税8%とともに施行された「改正厚生年金保険法」により、財政状態の悪い基金は解散するケースが多くなりました。
確定拠出年金(DC)とは
厚生年金基金では、運用がうまくいかず損失が出た場合に企業がそれを補填する必要がありました。
厚生年金基金に代わって導入が進んでいるのが、個人が資金の運用を行う「確定拠出年金(DC)」と呼ばれる制度です。
給与の一部を運用に回すと所得控除の対象となり非課税となること、および運用益を受け取る際にも税制の優遇があることから、積極的にその利用を検討する価値があります。
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老後の資金は年金だけでは足りない?
老後は一人一月27万円(豊かな暮らしには37万円)が必要と言われています。
年金がいくら貰えるかは後述する「ねんきん定期便」を参照するか、日本年金機構のサイトでおおよその額のシミュレーションによって知ることができます。
結論から言ってしまうと、現役のサラリーマン世代のほとんどは、老後の資金が公的年金(国民年金+厚生年金)だけで足りるというケースはまずないと言えます。
これに、退職金や貯金、企業年金、個人型年金などを組み合わせて必要な額を予測し、現役のうちに計画を立てておくことが重要です。
給与天引きの金額はどうやって決まる?
厚生年金の保険料は、2004年から毎年0.354%ずつ段階的に引き上げられ、2017年(平成29年)では18.3%となり、これ以降は固定となります。
サラリーマンの場合、給与明細の中で「厚生年金」として結構な額が天引きされているのはよくご存知のことでしょう。
厚生年金は「労使折半」として、会社がその半分を負担しますので、本人が払う額は9.15%分となります。
毎月の給与からの天引きの他、賞与(ボーナス)からも同じ税率で天引きされます。
また確定拠出年金などの企業年金部分がある場合は、控除として明細に現れる場合もあります。
また、産休や育児休業の間は、保険料が会社・本人とも免除されます。
ねんきん定期便とは
「ねんきん定期便」には、これまでの保険料納付の実績や、将来の年金給付に関する情報や受け取る金額の見込みが記載されています。
いわゆる「消えた年金」問題を契機に発行された「ねんきん特別便」以降、年金加入者へ納付実績の確認を促し、宙に浮いた年金記録の問題解消がその目的の一つです。
内容は、加入期間、見込み受給年金額、加入履歴、過去のすべての厚生年金の標準報酬月額(および国民年金の保険料納付状況)などが記載されています。
ねんきん定期便で通知されるIDを利用して、ネット上の「ねんきんネットサービス」で同じ情報を見ることも可能です。
届いたねんきん定期便は、少なくとも次の定期便が届くまでは大切に保管しましょう。
ねんきん定期便が届かない場合
ねんきん定期便は、すべての年金加入者を対象に、毎年1回誕生月に郵送されます。
第2号被保険者であるサラリーマンの場合、基本的には厚生年金を取り扱っている会社側が年金事務所への住所登録を行います。
そのため、引越などで住所が変わった際に、会社に届けている住所の変更を忘れるとねんきん定期便が届かないことになります。
また、結婚等での家族の登録が正しく行われていないと、第3号被保険者である配偶者の方へのねんきん定期便も届かなくなります。
サラリーマンではレアケースとなるでしょうが、平成9年1月以前には年金を払っていたが、以降に年金を払っていない場合は、年金基礎番号が付与されていないために年金事務所側での登録がされておらず、ねんきん定期便も届かない可能性もあります。
誕生月が過ぎてもねんきん定期便届かない場合、会社員の場合は勤め先に相談することになります。
(配偶者も会社員の場合は、配偶者自身の勤め先への相談)
参考:個人事業主なら国民年金をまとめて支払えばお得
サラリーマンは基本、年金は給与から天引きされ、これを本人が別に納めることはできません。
いっぽう、フリーランスや自営業など、個人事業主などで国民年金を自分で納める場合は、お得な方法があります。
国民年金は2年分をまとめて納めることが可能で、月々で納付する場合に比べて、2年間で15,000円程度の割引になります。
平成26年4月から2年に延長された前納期間ですが、2年分の保険料を納めるには口座振替を利用するしか法がありませんでした。
しかし、平成29年4月より、2年分の支払方法として口座振替に加え現金・クレジットカードを選べるるようになり、利便性とお得度が向上しています。
平成29年度の2年前納の割引額
前納制度を利用する場合、6ヶ月前、1年前、2年前と支払のタイミングと期間を選ぶことができ、より早く納めれば割引額が大きくなります。
平成29年度 | 6カ月前納 | 1年前納 | 2年前納 |
---|---|---|---|
口座振替 | 97,820円 (1,120円 1.1%) |
193,730円 (4,150円 2.0%) |
378,320円 (15,640円 4.0%) |
現金・クレジットカード | 98,140円 (800円 0.8%) |
194,370円 (3,510円 1.8%) |
379,560円 (14,400円 3.7%) |
(参考)月々納める場合 | 98,940円 | 197,880円 | 393,960円 |
()内は、月々納める場合と比較した割引額と割引率。
口座振替が最もお得で、現金・クレジットカードは同額で、口座振替よりもややお得度が下がります。
実際の金額は「国民年金保険料口座振替額通知書」「国民年金保険料クレジット納付額通知書」等で確認してください。
クレジットカードか電子マネー(nanaco、WAON)で支払う
割引率だけを見れば口座振替が優秀ですが、クレジットカードで支払えばクレジットカードのポイントが貯まります。
クレジットカードのポイントが1%付くと考えれば、口座振替よりもクレジットカードで支払うほうがお得ということになります。
クレジットカードによっては納税はポイント還元の対象外の場合もありますので、予め支払いに使いたいカードが対応しているか確認しておきましょう。
ポイントが付くクレジットカードの代表例は楽天カードです。
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社会保険料の所得控除の発生する年に注意
前納制度はお得ですが、1つ注意が必要なポイントが有ります。
それは、翌年の年金を納めた分は、当年の収入からの所得控除となる、という点です。
サラリーマンの多くの場合、翌年分の収入が当年と大きく変わらないケースでは深く考える必要はありません。
ただし、昇進などで収入が大きく増える予定があり、納税額(例えば、所得税の税率)が大きく変動することが予想される場合は、前納制度を利用せず、翌年に納付して翌年の所得からの控除を受けたほうが納税額が小さくて済む場合があります。
また転職中で国民年金と厚生年金の切り替えが発生すると手続きが煩雑になること、また失業などで収入が著しく低くなる期間があり、所得税よりも納付金の額が大きくなるケースも注意が必要です
まとめ:年金の支給額を把握していない人はいますぐ確認しよう
老後の資金計画は、さまざまなサイトなどで簡単なシミュレーションが可能になっています。
プレミアム会員向け機能ですが、MoneyForwardの未来シミュレーター「そよQ」なども利用できます。
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個人でサイトやアプリなどで試算する他は、ライフプランナー、ファイナンシャルプランナーといった専門家に相談する手もあります。
先の話でなかなか実感がないかもしれませんが、一度は老後に必要な貯金額などを試算しておくと、貯蓄や資産運用に対するモチベーションも高まることでしょう。