2014年からスタートしたNISAは、株や投資信託による投資運用での税制優遇が受けられる制度です。
非課税というメリットに着目したNISAの上手な活用方法、従来の株や投資信託とは何が違うのか見ていきましょう。
スポンサーリンク
Contents
NISAとは
NISA(ニーサ)は「少額投資非課税制度」のことで、株や投資信託(投信)などの運用益や配当金を一定額非課税にする制度です。
NISA口座を開設すると、毎年120万円までの非課税投資枠が設定され、最大600万円の投資総額まで、そこから得られる運用益(投資信託・株式の値上がり、配当金)が非課税となるため、大きな節税効果があります。
ちなみに、イギリスのISAという同様の制度を日本に持ってきたもので、Nippon Individual Savings Accountの略称とのことです。
つみたてNISAとの違い
2018年1月より「つみたてNISA」が開始され、NISAか「つみたてNISA」いずれかを選んで口座を解説できるようになりました。
つみたてNISAは、長期投資での資産形成を前提に、対象商品を投資信託に絞り、運用期間を20年までとしたNISAの別の形です。
NISAとの違いや活用方法についてはこちらにまとめてあります。
-
-
つみたてNISAと現行NISAの違いは?長期投資向けの新制度でNISAの本格普及なるか
2018年1月から今までのNISAに加えて、「つみたてNISA」制度が加わります。 つみたてNISAは積立に特化した口座で、投資枠は年間40万円、非課税期間が20年間と長期投資を前提に制度が設計されて ...
通常の株式や投資信託との違いは?
NISAも、通常の証券口座や銀行口座での投資運用と基本的には変わりませんが、選べる商品が上場株式および株式投資信託に限られます。
-
-
サラリーマンが覚えておくべき投資の基礎知識
超低金利時代のいま、余った給料を銀行に預けているだけではお金は増えません。 ネットで気軽に少額から投資ができる現在、忙しいサラリーマンでも資金の運用は決して難しいものではありません。 貯蓄の延長として ...
とはいえ、年間の非課税枠の120万円が、商品の売買双方の合算になることを考えると、こまめに売買を行うことで値上がりによるキャピタルゲインを狙うスタイルは、事実上不可能です。
結果的に、長期(制度が続く2023年まで、最大10年)の投資運用に用途が絞り込まれますので、インカムゲインとして株式の配当や株主優待、投資信託の分配金を狙うのが定石となりますが、最大でも600万円までの資産なのでそこまで大きな利益は見込めません。
そのため、NISAの基本的なメリットは、通常の投資運用であれば利益に20%の税金がかかるところが非課税となることと割り切り、貯蓄の延長として考えるのが賢い活用用法と言えます。
60歳まで受け取れないという違いはありますが、確定拠出年金(DC、iDeCo)と似た性質のものと捉えられます。
-
-
確定拠出年金(DC)の利回りは?節税の仕組みを理解してもっとお得に
確定拠出年金(DC)とは何でしょうか、通常の年金とはどう違うのでしょうか。 話題になっている個人型確定拠出年金(iDeCo)との違いは? 早く始めるほど節税メリットが大きく、特にサラリーマンには老後の ...
確定拠出年金では、預金、保険、債券など元本保証の付いた商品がありますが、NISAではそうした元本保証のある金融商品は対象外という違いが有ります。
どこで始めるべきか?
長期投資となると、毎月の積立て型で、ドルコスト平均法で買付ていく形が基本となりますので、売買手数料が無料(永久無料)の証券会社を選ぶほうがベターです。
キャンペーン等で入会から一定期間・回数は無料という証券会社もありますが、NISAでは最大で2027年まで売買が発生しますので、永久無料を謳っているネット証券系が候補としてあげられます。
- SBI証券
- 松井証券
- マネックス証券
- GMOクリック証券
- 楽天証券
もちろん、手数料だけでなく、扱っている金融商品も重要です。
長期の安定的な投資を考えるなら、国内・海外の株式インデックスファンドなどが基本となります。
NISA口座は通常の売買よりも手数料が優遇されている場合が多いのですが、同じ商品でも証券会社によって手数料が大きく異なる場合もあり、よく比較することをお勧めします。
銀行などでもNISA口座は開設可能ですが、取り扱っている商品の選択肢や手数料を考えるとやはり証券会社に一日の長が有ります。
NISA口座は一旦開設すると一年間は他の金融機関への移行ができず、手間もかかりますのでよく考えて選びましょう。
-
-
メイン口座にもサブ口座にも使える、高金利・便利なネット銀行口座を解説しよう
ソニー銀行、住信SBIネット銀行、ジャパンネット銀行、楽天銀行などのいわゆるネット銀行の選択肢が増えています。 ネットショッピングでの決済などと相性が良いこと、一般的な銀行に比べ普通預金の金利が10〜 ...
NISA口座開設申込時の書類
NISA口座の開設には、2013年1月1日時点の住所が確認できる書類の提出が義務付けられています。
NISA口座は1人1口座と定められており、税務署において1人が複数のNISA口座を設けていないか確認するための措置で、確認書類として「住民票の写し」を利用します。
現時点、NISA口座を開くためには、2013(平成25)年1月1日の住所を証明する住民票の写しを提出する必要があります。
このため、2013年以降に引越しを行い住所が変更している場合、「住民票の除票の写し」が必要になります。
この住民票の写しによる確認は最大4年間有効で、2014年のNISA口座を開設すれば、2017年までは再提出は必要ありません。
今後、2018年、2022年のNISA口座の開設時には改めて住民票の写しによる確認が必要となります(下記表参照)
勘定設定期間 | 基準日 |
2014(平成26)年1月1日~2017(平成29)年12月31日 | 2013(平成25)年1月1日 |
2018(平成30)年1月1日~2021(平成33)年12月31日 | 2017(平成29)年1月1日 |
2022(平成34)年1月1日~2023(平成35)年12月31日 | 2021(平成33)年1月1日 |
上記の通り、基本は住民票の写しを取得して提出で良いのですが、2013年1月1日以降の転居している場合は、「住民票の除票の写し」が必要となります。
住民票の写し同様の手続で役所等で発行して貰うことができ、発行から6ヵ月以内の原本(コピー不可)を提出します。
また、海外赴任等の理由で2013年1月1日時点では日本国内に住民票がなく、その後日本国内に居住した場合は、下記2点の書類でNISA口座を開設できます。
- 国外転出時に届出をした市区町村が発行する「住民票の除票の写し」
(自治体によっては5年程度で住民票が破棄されてしまう場合があり、その場合は「戸籍の附票」を代わりに発行してもらうことで代用できます) - 帰国後、2013年1月1日以降に最初に取得した「住民票の写し」
参考:楽天証券 海外赴任等により、2013年1月1日時点で日本国内に住民票の登録がない場合...
NISAの注意点
まず、NISAを始めるにはNISA口座を開設する必要があります。
NISA口座は一人一つで、利用する金融機関や証券会社の変更は可能ですが、開設する金融機関は1年単位でしか変更できません。
また、投資を行わなかった非課税枠を翌年分に繰り越すことはできません、また、売却した非課税枠を再利用することもできません。
このため、受けられる税制の優遇を最大にするには、早く開始して満額まで枠を使いきる必要があります。
ゆうちょ銀行や郵便局、一般の銀行口座での受け取りでは非課税とならず、通常の20%課税となってしまいます。
なお、既に現在までに、他の口座(特定口座や一般口座等)で保有している株式や投資信託等を、そのままNISA口座に移管することはできません。
またNISA口座で生じた売買損失は、課税される他の口座(特定口座・一般口座など)の収益との損益通算はできず、また損失の繰越控除もできません。
NISA口座は、通常の金融機関や証券会社の口座とは全く扱いが別のものと考えればよいでしょう。
2018年以降のNISA口座利用にはマイナンバー提出が必要に
2018年以降のNISA口座開設には、マイナンバーの提出が必要となりました。
これは、2017年までに既にNISA口座を開設済みで、継続して2018年以降も利用したい場合も同様です。
証券会社等へのマイナンバー提出の手続は、2017年9月30日までに完了する必要があります。
提出しない場合、後にマイナンバーの提供に加え、「非課税適用確認書の交付申請書」の提出が必要となり、再び口座を開設するのと同じような手間がかかってしまいます。
これは、平成28年1月1日より所得税法などにより証券会社へのマイナンバーの提供が義務付けられたことによるもので、必ず対応しなければなりません。
楽天証券など、一部証券会社ではマイナンバー提出でキャッシュバックが受けられる等のキャンペーンを行っているケースもあります。
非課税枠
NISA口座では、上場株式や投資信託等の売買益、配当益等の運用益が、年間120万円まで非課税となります。
一般の口座での売買益・運用益は税率20%が課税されますので、20%お得になると考えられます。
また金融機関や証券会社によりますが、NISAの本来の意義や年間120万円という上限を考慮して、月額1万円やそれ以下の少額からでも始められる商品が揃っていることも特徴です。
非課税枠の考え方が少々複雑なので、考え方を整理してみます。
- 一年単位で考えた時に、非課税の範囲内で、ある年に買付できる株式や投資信託の上限が120万円です。
- 下記の図で、例えば2014年に100万円分の投資をした場合、2018年までの5年間は非課税対象のまま保持することができます。
- この期間、この株式や投資信託が生み出す運用益は非課税となります。
- 売却した場合、差額の売却絵も非課税となります。
ただし、売却した分の非課税枠を再利用することはできません。
- 非課税期間5年が終わる2018年には、2014年時点で買付した株式や投資信託を、そのままNISA口座で保持し続けることはできません。
- それらの株式や投資信託は、このタイミングで一般口座や特定口座に移すか、売却することになります。
- 一般口座や特定口座に移すと、以降の運用益や売却益は課税の対象となります。
- また売却した場合、5年の間の売却と同じで、もともとの2014年時点の非課税枠を再利用することはできません。
- それらの株式や投資信託は、このタイミングで一般口座や特定口座に移すか、売却することになります。
出典:日本証券協会 NISAを知る より
職場積立NISAとは
2018年から始まる「職場積立NISA」は、企業の役職員が給与からの天引きなどによりNISA口座を利用して投資をする仕組みのことです。
2017年時点、各企業において、役職員の資産形成支援、福利厚生増進を目的に、この「職場積立NISA」の導入が検討されています。
既に確定拠出年金(DC)を導入している企業も多く、この職場積立NISAも併せて導入が進むものと思われます。
サラリーマンにとって選択肢が増えるのはメリットで、職場積立NISAが導入されれば、口座の開設手続きな内容の理解など、個人がNISAを始めるハードルが下がることが期待されます。
ただ、企業側で導入されるNISAを利用すると、利用する金融機関・証券会社や商品は限られてくるものと思われ、一人一口座が原則のNISAとしてはどちらかを選ぶ必要があります。
いまのところ、企業側の積立NISAが特段優遇されるようなことは無いようで、既にNISAを始めている人にはあまりメリットが無いかもしれません。
まとめ:貯蓄の延長として非課税のメリットを活かす
NISA自身が創設された背景の一つには、若者の投資を呼びかける目的があります。
近年は世帯あたりの所得水準が減少しており、特に20、30代の若者層が自身での資産形成を主体的に行うことを奨励して、将来のライフスタイルを見据えた設計を促すことがその狙いです。
ただ実際には制約が多く、また始めるハードルもそこまで下がっているわけではないため、今のところは投資に詳しい人が非課税枠をうまく使うための制度に落ち着いています。
サラリーマンには比較的相性が良い制度のため、確定拠出年金と組み合わせて、将来の資金として貯蓄的に活用するのが現実的といえそうです。